<三宅裕司&小倉久寛インタビュー>「劇団創立当初はお客さんに謝ったこともあります」劇団SET第59回本公演『太秦ラプソディ~看板女優と七人の名無し~』10月上演&劇団こどもSET第3回公演『世界中がフォーリンラブ』8月上演

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今年70歳になった三宅裕司が主宰の劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)第59回本公演「太秦ラプソディ~看板女優と七人の名無し~」が、池袋にあるサンシャイン劇場にて10月22日より上演される。

また、劇団スーパー・エキセントリック・シアターが未来のエンタメ界を担う新たな才能を発掘すべく、小中学生を対象に三宅裕司所属事務所であるアミューズ全面協力のもと、2018年に創立し、劇団SETのコンセプトである「ミュージカル・アクション・コメディー」をこども達に余すことなく継承し、こども達用に書かれた作品ではなく、これまで劇団SETの俳優たちが演じてきた本公演を毎年こども達だけで上演する、劇団こどもSET第3回公演ミュージカル・アクション・コメディー「世界中がフォーリンラブ」が品川区にあるスクエア荏原 ひらつかホールにて8月13日(金)~15日(日)に上演される。

劇団創立40年を超え、さらに主宰の三宅が70歳を迎えて、心境の変化やこれからの劇団SETについて、そして劇団員でもある小倉久寛にもインタビューを行った。

「劇団の世代交代も必要だが、体が動くうちはステージに立ち続けたい」とのコメントするなど、劇団主宰・演出家・役者として自身の思いや今年の本公演について、そして劇団こどもSETについて伺った。

三宅裕司&小倉久寛インタビュー

三宅さん、改めて70歳おめでとうございます。この10年の間に、60歳の時に脊柱管狭窄症で手術。半年かけてリハビリを受け復活。67歳の時は前立腺肥大で2度の手術と1ヶ月の入院。68歳では大腿骨骨折で手術と1ヶ月の入院と3ヶ月の松葉杖生活をされていて、満身創痍の60代でしたが、70歳になられて、心境の変化などありますでしょうか?

三宅)60歳から68歳まで酷かったです。

ある人の話では、60歳から67、68歳までが人生で一番悪い時期で一番大変な時期だったって言うんです。
それを乗り越えた後はずっと良くなりますって言ってくれていたので、そういう前向きな言葉だけを信じれば「よし、これからいくぞ」って気持ちになれます。

だから今は絶好調です。
どんどん若くなってます。

三宅さんが28歳の頃に劇団SETを作られて今回の本公演が59回目、創立42年を迎えますが、当時に劇団をここまで大きく、そして続けようとの思いはありましたか?

三宅)んー、なかったでしょうね。
もともとアングラとか新劇とか難しい芝居が多い中で、もっとお客さんが面白いと思うような芝居をやりたいなっていう思いでミュージカル・アクション・コメディーにしたんです。
その前の劇団でコメディーをやると言うので劇団「東京新喜劇」そして劇団「大江戸新喜劇」に入ったんですけど、そこでちょっと自分がやりたい事と違うなって感じて抜けたんです。
劇団SETを作った頃は、やっと自分たちでやりたいことが出来る劇団が出来たなって言う喜びの方が大きかったですね。

インタビュアー)私は人生で初めて観た舞台がSETでした。それは今でも良かったなって思っています。

三宅)そうだと思います。
と言うのは、劇団SETは芝居の入り口として入りやすいし、わかりやすいし、捻って難しくしてないし。

小倉)鴻上尚史さん(1981〜2012年まで第三舞台の主宰を務める)が昔言ってましたよね。
「お芝居を観るんだったら、まず、うち(第三舞台)を観る前にSETを観てから来てくれ」って。
そうすると演劇に入りやすいからって言ってませんでしたかね。

三宅)その当時、誰かが「わざと難しくするとお客さんが優越感を持って帰ることができる」とか言ってましたね。
「俺は分かるよ」って言うところをくすぐるって。

自分はそっち方面が嫌いだったんですよね。
だって本当に分からないんだもん!(笑)

三宅さんと小倉さんお二人だけのシーンは長年ファンの皆さんを楽しませていますが、この場面での思い出などはありますか?

三宅)俺がアドリブで言った一言がツボにはまって小倉が吹いちゃってセリフが言えなくなったことがあったじゃない。
それがたまたま収録の日の舞台で、そのシーンの映像がDVDに残ってるっていうのは面白いよね。
熱海五郎一座の時だったかな。落語の芝居で、師匠と弟子の役だったんですけど。

小倉)三宅さんが変なことを言ったんですよ。

三宅)小倉が笑ってセリフを言えなくなるっていうシーンが映像に残ってしまうのはなかなか珍しいですよ、数ある中で。

小倉)思い出すと色んなことがありましたよね。

三宅)舞台上にいる二人だけしか分からない面白さもある訳ですよ。

小倉)村芝居で大笑いする役なんだけど、どうしても笑えないので笑い方を教わるシーンで「笑えって言ったって、急に笑えないよ」とか言って、笑う練習をする訳ですよ。
「はははは、はははは」って言いながら、自分の好きなことを考えていれば気持ちが乗ってきて、そのうちに笑えるっていう設定なんです。
それでもなかなか最後まで笑えないっていう役なんですけど。

僕が真剣に悩んでるのに三宅さんがお客さんに分からないように面白い顔をしてきたんですよ(笑)
それを見ちゃって、笑えないっていう設定なのに笑っちゃって(笑)
しばらく二人のシーンが続くはずだったのに「今日はもう止めよう」って三宅さんが言って(笑)
笑っちゃったらもう成立しないんですよ。

三宅)もう教えなくても笑えるじゃんって!(笑)

小倉)だからその後が大変でしたよ。裏でみんなはその間に準備があるから。

三宅)衣装の着替えが途中なのに「終わっちゃった!終わっちゃった!」って。
あわてて舞台に出たら靴が半分脱げかかってたりして(笑)

小倉さんから見た、三宅さんの凄さって感じますか?

小倉)本人の前でそれを言葉にします?

三宅)ちょっと席を外そうか?(笑)

小倉)どう言ったらいいだろう。
ひと言で言ったら、劇場を仕切っている感じはしますよね。
舞台は言うに及ばず、お客さんまで仕切っている感じはしますね。

大江戸新喜劇の時から感じていました。
まだ自分は客席から観てましたけど。

まだ全然売れていない三宅さんが、その時の『喜劇・自殺志願』(1978年6月、旗揚げ公演@池袋シアター・グリーン)というお芝居に出てまして。
その時からお客さんを転がしてる感じはしましたね。

先日行われたBlue Noteでのライブ※では、そうはいかなかったみたいですけど。
(※: ENTERTAINMENT BIGBAND LIVE 三宅裕司 & Light Joke Jazz Orchestra with special guest 島袋寛子 “スタンダードジャズをスウィングしよう” 2021年7月16日〜18日)

僕は予定が合わなくて行けなかったんですけど、話だけを聞いて三宅さんが緊張する時もあるんだなって(笑)

三宅)お客さんにお酒の提供が出来なかったので、いつもとちょっと違う雰囲気でそれが伝染して自分も固くなっちゃって。
それがまたお客さんに伝わって。

小倉)そう言う意味では、三宅さんの緊張する姿を見たかったなって思いました。

あと細かいことはいっぱいありますよ。
役者のセリフをよく聞いてますね。
ちょっとでも変なことを言うと、聞き返したりするんです。
自分たちは何度も言ってるセリフですけど、お客さんは初めて聞くセリフですから、すごくお客さんの立場に立ってる感じはします。
役者としても演出家としても。

演出をしている時も、舞台に立っている時も、半分はお客さんの立場になってるんじゃないかな。
それが、良いのか悪いのか分からないですけど。

三宅)それは良くないんだよね。
笑いのシーンは役が7割、3割は劇場全体を俯瞰して見てて、何かアクシデントがあったらなんとかしようって言うのはありますけど。

今年の熱海五郎一座はお客さんが半分しか入れられなくて、初日がいっぱい入っていて、反応が割と良かったんですけど、2日目のお客さんはそれよりずっと少なくて。
その時は舞台上で役者で居られなかったです。
ずっと演出家で居て、「あれ、ここでウケないな。どうしようかな」って考えてたら、自分のセリフを間違えたりとかして。
だから良くないことなんですよね。

もう舞台上に出たら演出のことは忘れなきゃいけないですよね。
なかなかそれがね、長年のクセでね。

小倉)でも、そうやって見てくれているからでしょうね、お芝居は日に日にプラスになっていってます。
そういう凄さみたいな事は前から、ずっと前から感じますね。

三宅)SETの最初の頃、上手くいかなかった公演の時は、カーテンコールの挨拶でお客さんに謝ってましたからね。(笑)
(劇団員の)山崎(大輔)から「あれ、止めてくださいよ!」って言われてました。
「今日はすみませんでした」って謝ってたんです(笑)

2016年本公演『土九六(どくろ)村へようこそ』 のカーテンコールで、三宅さんが「劇団の若返りをしていく」と話していて、翌年の『カジノ・シティをぶっとばせ!!』の囲み会見の中で「今回は若手を多く出して、劇団の世代交代公演みたいにしていてる」と話していました。
前回の『世界中がフォーリンラブ』では主役に富山バラハスさん、ヒロインに山城屋理紗さんと若手の起用がありました。
今回の「太秦ラプソディ」での若手の起用を多くしていく予定なのでしょうか?

三宅)そうですね。
劇団員は20代から70代まで居て、こんなに年齢層が幅広い劇団はないと思いますし、作家も大変だと思います。

そう言う意味では、今回の太秦という設定で大部屋がひとつの特徴になります。
大部屋をいくつも作ったりして、たくさんの人が面白い設定の役になれるように作家と話し合って工夫しています。

歳をとっている我々は、歳相応の役がありますよね。監督とか大部屋の古株とか。
中堅劇団員は、40歳代くらいの役者でずっと大部屋にいながらまったく売れていない役が出来る訳ですよ。
アイドルとして売れている若い子は、生意気な主役をしたりとか。

今回の本公演のテーマは、年齢層が広いからこそ色んな設定が出来る話になるなと思います。

若手中心にしていく流れになってきてますけど、今回の設定は割と歳いっている劇団員も重要な役になれるのかなと。
それぞれがちょっとずつ場面を受け持って、最後にはまとまっている内容に出来るかなと考えています。

これからのSETも世代交代を考えていく公演になりそうでしょうか?

三宅)三宅、小倉に頼っていると、居なくなった時にSETは無くなりますよ。
ですので、頼らず今のうちに新たに引っ張れる若い劇団員がたくさんいるといいなって気持ちはあります。

だからといって、三宅、小倉が引くかと言うと、舞台上で出来るうちは「絶対に俺たちが一番面白いぞ」っていうチャレンジは続けたいという気持ちもあります。
ですので、非常に難しいところですよね。