<そら博2018インタビュー>イベント総合プロデューサーの村田泰謁さん(村P)にそら博2018について今年も聞きました
2018年8月5日(日)に船橋港に停泊している元南極観測船『SHIRASE』にて、ウェザーニューズ主催のイベント「そら博 in SHIRASE」が行われました。
毎年恒例となりつつあるこのイベントでは、自由研究が出来ることから多くの子供たちが来場し、開場とともに大いににぎわっていました。
今年のそら博は、これまでの幕張メッセから移動し、ウェザーニューズの関連財団が所有する元南極観測船『SHIRASE』で行われたこともあり、会場の一部は炎天下になり、あちこち駆け回って汗だくになっていたイベント総合プロデューサーの村田泰謁さんに開催中にも関わらず、インタビューをさせていただきました。
イベント総合プロデューサーの村田泰謁さんインタビュー
今回の開催場所についてお伺いします。会場が幕張メッセから移動しましたね
村田)そうですね。満を持してって感じもありますけど。
これについては、そら博の文脈と、SHIRASEの文脈があって。
SHIRASEは元々財団として気象文化を話し合われる場であったり、キッカケを作る場としてあって、いつかタイミングが合えば一緒にやりたいなと思っていました。村田)そら博としては、毎年新しいチャレンジをしてきて、サポーターと始めたというイベントから、一般を対象にサポーターがボランティアスタッフを担ってどんどん規模が大きくなっていきました。
この規模が大きくなってきたところで、大混乱の年もありましたし、有料にして来場者をバランスよく開催が出来て、じゃあ次は何なんだと。
そら博の開催が「千葉だけで良いのか」という声がサポーターからも多く、そして色んな外部の方からも「そら博を知っている」と言ってもらえることも多くなりました。
特に教育関係の方々にはとても知られていて、先日、東京の小学校の校長先生や理科担当の先生たちと話をする機会があり、「そら博って村田さんがやられていたんですか!」って話になって、それで一気に話しが進んだこともありました。
みんなで作ってきた『そら博』というブランドを、千葉だけではなく、もっと求めている人たちのところで開催出来たらいいなって妄想に近いですね、"構想"ではないです"妄想"です(笑)
次の可能性を見せられる、みんなが感じられる場を作っていきたいと思っていて、今年の開催は、色んなところに声を掛けていたんです。
去年から「一緒にやりませんか?」と。
ウェザーニューズの地元ではない場所で開催する場合、開催する地元の助けが無いと出来ないですし、地元の人たちにとって一番良い形は何なのかなって。
そこは地元と向き合っていかなければいかない。
声を掛けていったんですけど、ファーストステップは、会社のブランドとそら博のブランド、そしてサポーターの力というものがあって、お陰様でみんな「やりましょう」「やりたいです」って言ってくれるんです。
その後の、本当に実現するために必要な人・物・お金などが全部クリアできたのが、今回のSHIRASEと川崎の2つで、そのうちの一つがSHIRASEだったってことです。
しかるべき場所での開催になったといいますか、長年のサポーターからは「なぜ、SHIRASEで開催しないのか?」といった声も多くあったと思います
村田)僕らもSHIRASEに対する期待は大きかったんですけど、一般の方がここまで(停泊している船橋港)来る一番のネックは交通手段なんですね。
SHIRASEまでは、電車では来られない、路線バスでは来られない、バスをチャーターしなければならないというハードルが高くて。
そら博はこれまでの規模で言うと、何万人という人たちが来る、それを受け入れるイベントだったので、SHIRASEでは出来なかったんです。
何かのシンポジウムをやるですとか、決められた人が来る場所としては、良い場所だと思うんです。
ですけど、一般の人たちが気軽に来れる場所ではなかったので、これまでは出来ませんでした。
SHIRASEに泊まるのも、所有している財団からは「泊まっても良いですよ」とは言われているんですけど、アウトドアに慣れている人たちはその延長で泊まれると思いますが、一般の方々は泊まるのは難しいと思います。
シャワーやトイレなどは完備されていますけど、それでもハードルは高いかなと思います。
探検と言う意味では面白いですけど、イベントとしては成立しないです(笑)
今年は猛暑で全国各地、熱中症でダウンする方が多くいらっしゃいます。SHIRASEでの開催にあたり、暑さ対策など考えられていましたか?
村田)めちゃくちゃ考えていました!
今年のそら博に関しては、熱中症の対策と、トラフィックのコントロールをどうするかが今回の一番のポイントでしたね。
バスをチャーターして、新習志野駅とSHIRASEの間をピストンで輸送しなければならない。
なので、運べる人数の絶対数が決まってしまうんです。
それ以上の人たちが押し寄せた時に、どのように対応するのか、どこで締め切りを作るかといったオペレーションの対応が必要でした。村田)それと、とにかく涼しい所で体験できるかが重要でした。
船内はスペースが限られているんです。
だから、全部が全部涼しい所を作るのは物理的に無理なので、人が移動するような滞留しない場所や見て回れる場所は蒸し暑くても仕方がない。
その代わり、座って工作を行うような場所はガンガンに冷やしておくように、レイアウトをしていました。
よほどの荒天じゃない限り、幕張メッセでの中止は無かったと思いますが、SHIRASEでは開催を中止せざるを得ない状況になる可能性が高かったと思います。今日は無事に開催できましたが、開催可否の決定についてプロセスを教えてください
村田)このSHIRASEのポイントは「風」なんですね。強風が吹くのか吹かないのか。
あとは、ここまでの交通に影響があるのかどうか、という視点だと思います。
まずは、風と波ですね。
SHIRASEが台風の進路上にあれば開催できないですし、突然天気が悪くなることもあるので、そういった場合に対応をとるようにしていました。
特に、来場者には外で受付をしてもらってましたから、日よけのテントを16張りくらい立ててたんですよ。
待機列はそこに並んでもらっていたんですけど、風が吹いたら畳まなければなりません。
SHIRASE自体は、風速15m吹いてしまうとイベントが出来ない決まりになっているんです。
実際に風速10mって「風が強いな」って感じる程度なんですけど、でもそうなると外のテントは危ないですね。
ですので、リアルタイムに風速などを確認しながら、風が強くなったらテントを畳むなどのオペレーションを作っていました。
天気の対策というものは、他のイベントと比べてみても気象会社が開催するイベントなので、出来ているかなとは思っています。
ボランティアスタッフの定員が7月31日に迎えられたようですが、順調に集まったみたいですね
村田)幕張メッセの規模とは違うので、早めに締め切りを迎えましたが、幕張メッセで開催していたら、まだ募集していたと思います(笑)村田)ワークショップの数でいうと、幕張メッセの場合は40個ちかくあったのが、今回は11個。
SHIRASEは、ワークショップ以外に安全誘導などにも配置をしなければならないですが、それでも余裕をもって前回の半分ぐらいの人数で十分でした。
結果的には、予定していた募集人数を軽く超えましたね。
開催日が近くなると、どんどん応募が増えていってビックリしました。
ボランティアスタッフの人数は予定通り集まって、休憩時間もたくさん取れるようになっていると伺っておりましたが
村田)そうですね、問題無いとは思っているんですけど。
始まったら始まったで、みんな頑張っちゃうんですよね。
一応計算では、2時間に1回、1時間休憩が出来るようなシフトに組んであるんですけど、さっき休憩室をのぞいたら、みんなそんなに取ってないみたいな感じがするので(笑)
みんな、楽しくなってるのかなって感じがします。
前回までの幕張メッセでは、来場者が多くワークショップの列も長くなり、スタッフの大変さも見え隠れしていたように感じました。
今回は、全体的に来場者もスタッフもゆっくりと出来ているように見受けられました
村田)このようなイベントで一番難しいのが、キャパシティーコントロールですね。
イベントに「来て」とは言うけど、「あまり気過ぎないで」とは言えないですから。
幕張メッセは、自由に来ていただく事が出来ますが、SHIRASEの場合はバスのチャーター便に乗って来られる人数が定員になります。
ただ、午後になると来場者も落ち着くので全体の来場者は多くて1500人程度ではないかと思います。
ですので、その人数を超えないようにプロモーションを考えて行ってきました。
これまでの幕張メッセでの開催の時のようにローラー作戦でのPRは今回していないです。
ピンポイントで、この近くのエリアの人たちがチラシや情報を見るようにかなり絞ってました。村田)イベントを開催するにあたり、何を目的にするかを考えるんですね。
「今回は集客だ」とか「収入だよね」とかあるんです。
前回からは、"来場者のクレームになるようなイベントをしてはいけない"として、【来場者の満足度】を第一に掲げて、どうやって満足度を上げていくか、来ていただいた方に「来てよかったね」って言ってもらえるか、そうすれば迎えたボランティアスタッフも「楽しいよね」ってなるので、それが第一目標になっています。
その為には、キャパシティーをコントロールしていかなければなりません。
昨年のそら博は「教育」の観点が強く、STEM(ステム)教育などがありました。今年のそら博の特徴を教えてください
村田)今年のワークショップを決めた観点は「人気」なんです。
人気のワークショップから決めていきました。
そら博が終わった後にアンケートを取っていて、回答の内容だったり、実際に担当のスタッフから評判などのフィードバックをもらったりしています。
あと、整理券の配布具合を確認していて、すぐに無くなると人気があるとわかるので、次回も鉄板で組み込んでおこうとか。
そこから対応できるスタッフの人数を増やしたり、体感できる人数を増やしたりして調整を図っています。
どのワークショップも同じ人数で定員を作ってしまうと、人気があるものはすぐに埋まってしまうので、人気があるものほど席を増やしています。
ですので、SHIRASEに来られた方は人気のワークショップは必ず出来て、あとは時間に余裕があれば他のワークショップも回れるようにするのがバランス良いのかなって思ってます。村田)人気ナンバーワンのワークショップは「あなたも雲博士『雲図鑑』工作」です。
そして、今日一番最初に売り切れたのは「太陽電池で動く『ソーラーカー』工作」でした。
ソーラーカーは雲図鑑よりも定員を少なく設定しているので、先に売り切れになってしまいましたが、一番人気は雲図鑑です。
女子の人気が高いのは「外にいると色が変わるよ 『紫外線ビーズアクセサリー』工作」です。
まず、これらのワークショップは入れて、席を多く確保しています。
そして、このワークショップを軸にして、スペースを見て、評判の良いものやそら博のテーマに沿ったワークショップを選んでいました。
雲図鑑のワークショップに立ち寄りましたが、人気でしたね
村田)出来上がりの見栄えがするんですよ!
やったなって感じがするので、良いと思います。
次回の川崎会場では、異なる点はありますか?
村田)基本的には同じ考え方で、SHIRASE以上の対応人数にはしています。
ですので、もっとたくさんの方に体験してもらえるようになっています。
『SHIRASE』はウェザーニューズと関係が近い財団が所有しているので、開催するにあたり話も通りやすかったですけど、川崎会場(東芝未来科学館)の東芝さんは全くのアウェイというか。
実は一昨年、科学のイベントでワークショップを一緒にやった事があるんです。
その繋がりで、今年開催することになったんですけど、科学館の方々も『そら博』をご存知でしたし、「何万人も来るものが東芝未来科学館に来たら大パニックです」ってところから始まってました。
イベント内容に関しては、すべてお任せいただいていました。
ですので、川崎でもSHIRASEでやっている内容と同じ感じでワークショップが少し追加になるくらいですね。
対応人数はSHIRASEの倍ぐらいは想定しているので、2000人くらいは大丈夫です。
ここで、ちょっと脱線
番組が『SOLiVE24』から『ウェザーニュースLiVE』に変わりました。いまはどのような感じでしょうか?
村田)毎年毎年、異常気象と言われてきていますけど、毎年毎年、気象のニュースって色々あるんですよね。
毎年異常って事ではないと思いますが、特徴的な災害が発生してしまっていて、今年も西日本で大雨が降ったり、大阪の地震とか、梅雨が短くて猛暑が続いたり。
そういった気象がニュースになるタイミングで、より多くの方に見て頂ける番組というものにいまなってきているのが数字で表れてきています。
番組へのアクセス数もこれまで以上になっています。
『ウェザーニュースLiVE』は、地上波のニュース番組のようにしていきたいのかな?と思ったりしたのですが、方向性としてどのように考えていらっしゃいますか?
村田)一般の方が、地上波の番組を見慣れているので、たぶんそのようなテイストの方が見易いんだろうなってことです。
「地上波が良いよな」とか思ってはいないですけど、地上波の番組は50年60年の歴史があって、ノウハウがあってあのようなスタイルが出来上がっているんです。
僕らはインターネットというメディアを使っている以上、"双方向というのは地上波に無い武器"なので、そこは持ち続けて、サポーターとのコミュニケーションがベースにあり、予報にもしっかり生かされていて、それを24時間伝え続けている。
その伝えるテイストは、より多くの人が見易い形を取り入れましたよねっていうだけだと思っています。
だから基本、何も僕らのコンセプトも変わっていないし、演出がちょっと変わっただけです。
一般の方に受け入れてもらえる番組作りを・・・、あ、一般の方という言い方をすると、これまでの方が・・・。
村田)これまでは、一般の方ではないです(笑)
一般の方にやったつもりがないです(笑)
今年の夏は大雨や猛暑など、「災害」に関する要素が多くあり、ウェザーニュースが配信している記事を多く見ています。ヤフーのトピックスにも数多く取り上げられ、先日はニューストピックスの1位2位で取り上げられていました。記事配信には力を入れている感じですか?
村田)そうですね。
いままでと違う事は、僕らが持っている情報を色んなところで配信してくれるようになったんです。
これまでは、出してくれる場所が無かったので、自分たちのメディアで出していたんですよ。
でも、動画のプラットフォームも増えたし、ニュースのプラットフォームも増えたし、しかもカテゴライズされてブランドが出来てきている。
うちとしては、元々あるコンテンツを、それぞれに合わせて出しただけなんです。
記事作りの部署では、人数を多く配置して運営体制を作って、それぞれのプラットフォームに配信をしています。
メディアの特性が出てきて、どのような記事が好まれるかも分かり始めたので、研究を重ねてより取り上げられやすい記事作りをしていっています。
知見が徐々に集まり始めて、それで世の中に出やすくなってきましたね。
以前、『季刊「そら」』という雑誌を作っていたチームにお手伝いをしてもらっていて、「どこどこで40度になりました」のようなストレートニュースだけだとユーザーにも飽きられてしまうので、ウェザーニュースらしい読み物も配信して「面白いな」って思ってもらいやすい記事の作り方は、雑誌を作っていたライターさんの方が長けているので、スタッフが学んでいる状態です。
来年以降への展望
今回はじめて幕張メッセを飛び出しての開催となりました。今後の展開はどのようにお考えですか?
村田)来年は20ヶ所くらいで同時開催しようかなって(笑)(同席していた広報の當眞さんが思わず「えー!」と心の声を漏らす)
當眞)私、いま広報ではなくて、運営としての本音が出ちゃった(笑)
村田)(爆笑)村田)例えば、主要都市7カ所だけでやろうとしても、7回これをやるんですか?って言ったら、ウェザーニューズはそこまで体力が無いです。
出来ないです。
やって2回が精いっぱいですよ。
それでも、全国で待っているもっとたくさん子供たちのためにやりたいよねって思ったら、日にちは2回に分けてもいいですけど、でも同時に出来る運営と場所が無い限り、実現しないと思っています。
あとは、それをやれる方法を考えようってだけです。
開催出来る場所を探そうと、去年からずっと動いていました。
ずっと種も撒いています。
もしかしたら、発芽するかもしれないと思っています。
なるべく同じ文脈で展開できる所にお声掛けしていてました。
今年は苦戦しました。苦戦というか、学びましたね。
例えば、自治体に近い相手にはこういう風にしなければいけないとか、民間は民間でこうなんだとか、たくさんのノウハウが出来ました。
その中で、一緒にやっていただけるパートナーに、今回のそら博の結果を持っていって何度も交渉をして、あとは助けて頂けるボランティアさんと一緒に子供たちのためや地域の人たちのために、出来ればなって思っています。
「教育」は、夏休みの自由研究っていう分かりやすいテーマなので、開催しやすいんですよ。
その先に、地域コミュニティやネットワークというものが出来て、その先に防災・減災があるんです。必ず。
いざという時に生きるはずです。村田)僕らが展開した『そら博』のエリアで災害が発生したときに、そういう人たちが助け合える。
他の人たちも助けてあげられるようなネットワークが最終的に出来たら良いなって思っています。
そら博は、そのためにやっているので。
なので、やる。
やる!
やるんだ!って感じです(笑)---お忙しい中、ご対応いただきまして、ありがとうございました。
ページ1:<イベントレポート>「そら博2018 in SHIRASE」ワークショップ
ページ2:<イベントレポート>「そら博2018 in SHIRASE」SHIRASE探検隊
ページ3:<インタビュー>総合プロデューサーの村田泰謁さん(村P)に今年も聞きました
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