<インタビュー>今年の劇団SETは「純愛もの」「オンライン生配信」「コロナ対策」と、創立41年目にして初めて尽くしの本公演に!舞台『世界中がフォーリンラブ』10月9日よりサンシャイン劇場にて上演

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劇団スーパー・エキセントリック・シアターとは

1979年11月劇団創立。創立41年を迎える。

解り易くて誰もが楽しめる、サービス精神旺盛な芝居を目指し、三宅裕司、小倉久寛らを中心に結成された劇団スーパー・エキセントリック・シアター(通称SET)。

劇中にアクション、ダンス、歌、笑いをふんだんに取り入れ、尚且つ、社会に対しての警鐘を提示し続ける作風は“ミュージカル・アクション・コメディー”として確立され、演劇界の第一線を走り続けている。

10月9日(金)から開幕する第58回本公演ミュージカル・アクション・コメディー『世界中がフォーリンラブ』

昨年は劇団創立40周年を迎え、本公演のカーテンコールでは座長の三宅が「これからもまだまだ体が動く間は頑張る」と堂々の宣言をした。
ところがその矢先、コロナウィルス感染症による影響で演劇界は軒並み公演中止や延期を余儀なくされ、大きなダメージを受けてしまっている。

まだ終息が見えない中、毎年秋の恒例行事である劇団SETの本公演は、政府、東京都ならびに関係諸機関により策定された新型コロナウィルス感染症対策ガイドラインにもとづき、感染拡大防止対策を講じて開催することが決定した。

感染症予防対策として、公演場所となるサンシャイン劇場では、1階席前方を空け、その他の座席は前後左右1席ずつ空けてチケットを販売。
そして、来場時や観劇時には、常にマスクの着用をお願い、劇場入り口では検温を行うなど、万全の対策で実施される。

現在、劇団員たちは10月9日(金)からの本公演に向けて絶賛稽古中で、稽古に入る前には関係者全員がPCR検査を受け、稽古場に入る人数も制限しながら、進めているという。

上演中はもちろん、稽古期間中からコロナ対策を行い、これまでとは違った稽古になっているという。

さらに初めてのことはこれだけではない。
劇団史上初の純愛をテーマに取り上げる。

そして、初めてオンライン生配信が行われることが決定した。

今作のヒロインには、入団5年目で実力を着々と付けてきた山城屋 理紗(やましろや りさ)。
そして、その相手役には、入団2年目の富山 バラハス(とみやま ばらはす)が選ばれた。

創立41年目にして初めて尽くし、そして若手の起用による本公演になる。

9月某日、稽古場にてこの二人のインタビューを行い、稽古場の様子や、本公演に向けての熱い想いを語っていただいた。

山城屋理紗 & 富山バラハス インタビュー

自粛期間中はどのように過ごされていましたか?

富山)僕は、レーシックをしましたね。
前まではメガネだったんですけど、この期間中にやっておこうと思って。
照明などでコンタクトレンズが渇いて落ちてしまう事があって集中できないのでこの機会にやりました。
自粛中で一番大きかった出来事はこれですね。
普段できなくてやりたかったことをやろうと思ってやりました。

山城屋)私はとにかく気になっていたマンガを読み漁りました。
もともと好きなんですけど、いつか時間が出来たら読みたいなって思っていた作品を読み漁り、「いまのマンガは面白いな~」って思いながら(笑)
ほぼほぼ少年マンガなんですけど。

「ハイキュー」を読みました。
女の子に人気で、私の同期の安川里奈(※1)と辻大樹(※2)が出演していたという事もあり、全部読んで自分もめちゃくちゃオタクになって、「私の同期、ハイキューのメンバーにいるんだ」って。
「二人とも羨ましいな」って熱くなってました(笑)

※1:2020年3月-ハイパープロジェクション演劇 『「ハイキュー!!」"最強の挑戦者(チャレンジャー)"』鳥野高校OG 田中冴子役で出演
※2:2019年4月-ハイパープロジェクション演劇 『「ハイキュー!!」"東京の陣"』戸美学園高校 高千穂恵也役で出演

山城屋)あとは最近話題の「BEASTARS」(ビースターズ)とか、「ブルーピリオド」なども全部読んでましたね。
いま、マンガの実写化とかも多いじゃないですか。
そういう事もあって、いっぱい知識を入れてました。

でも、いっぱい時間があるなって思っていたら、あれ?って(笑)
時間がありすぎてどうしようって思っていたのに、今思えばあっという間に終わってしまいました。

富山)慣れてきたなって思ってたら自粛明けになってましたね。

山城屋)仕事もありがたいことに始まってって感じですね。

<と、ここで、別室で稽古をしていた座長の三宅裕司さんが立ち寄った>

三宅裕司)どーも、お世話になってます。
今回のこの二人、なかなか良いんですよ!
よろしくお願いします。

山城屋)初めて聞いた、今の言葉!
嬉しいですね。

去年までの本公演とは異なる稽古になっていると思いますが、どのように行われていますか?

山城屋)去年までは稽古が始まったら、朝から晩まで休みなくみんなで稽古場に居たんですけど、今回はそれが出来ないので演出助手とスケジュール係が香盤表を見比べて、なるべく稽古場に人数が集まらないように事前に稽古のスケジュールを組んで、劇団員が入れ替わるようにしています。

いつもであれば、自分が出ていないシーンを見てて、みんなで笑いながらとか、出ていない劇団員からのアドバイスをもらったりして、笑いの絶えない稽古場なんですけど、それが今回はまったくできないですね。山城屋)出番の劇団員が演出の三宅さんと、演出助手の赤堀さん(赤堀二英)の2人だけの前でやる緊張感はすごいですね。
お客さんの反応とは違いますが、周りで見てくれていた劇団員の反応が無いので、特に笑いのシーンはシュールな感じになって、大丈夫かなって(笑)
でも、三宅さんに演出していただいているので、その通りにやれば本番も大丈夫だと思うんですけど・・・不安になるよね?

富山)焦りしかないです(笑)
これまでは周りの反応を見ることが出来てたんですけど、今回はまったく出来ないので、静かです(笑)

スタッフ)劇団員もこのやり方になれていないので、自分の時間じゃないのに、間違って稽古場に来ちゃうんですよ。
間違ったって分かると、稽古場が密になってしまうから、入るとすごく悪い事をしたと感じて「しまった!」ってすごすご帰っていくんです。

一同)爆笑

山城屋)稽古場に来るのが当たり前になっているので、逆に何回もスケジュールを確認して「行かなくて大丈夫だよな?」って不安になってるんですよね。
稽古場に行ってみたら「セリフ無いんだから来なくていいよ」って突き返される人もいました。

稽古時間の前後で練習とかしたいんですけど、それも出来ないです。
今までだったら、1年目の劇団員が先に稽古場に来ていたりしたんですけど、それが逆に怒られることになり「早く帰って」って言われちゃうんです。
なんか、変な感じです。
小倉さんがずっと「寂しいなぁ~」って言ってます(笑)

小倉さんと座長のシーンは全員でいつも見ていて、毎日の変化を楽しんでいるんですけど、今はお二人だけでやられているから見られなくて残念です。
お二人のシーンは本番まで見られないんじゃないかって。

富山)今年の稽古は、ZOOMで見ることが出来るようになってます。
制作さんがカメラを設置してくれて、見るだけなんですけど、稽古に参加出来ます。
でもやっぱり、稽古場とモニターでは空気が違いますね。

山城屋)ZOOMで出来るのは立ち位置の確認とかですかね。
でも、すごい時代になったなって思います、家で稽古を見られるって。

若手の劇団員にとって、今年は大変じゃないですか?

山城屋)そうなんですよ!
今までだったら1年目2年目の劇団員は、稽古の時に先輩劇団員の代役で立たせてもらえることがチャンスだったりするんですね。
代役をしっかり覚えてやることによって、本公演でセリフが無くても座長や他の劇団員にアピールになるんです。

富山)そういうことを考えているんですね。

山城屋)もちろん!

今回は「今日はこの先輩が休みだ、よし!」みたいなことが出来ず、毎日決められた劇団員しか稽古場に入れないので代役も出来ません。
でも、三宅さんも40年やってきて、こんなことは初めてだろうなと思います。富山)自分は去年が初めての本公演でした。
ですので、まだ慣れていないこともあり、去年との違いを大きく感じないですけど、去年は先輩たちの芝居を見ていたり、座長の代役をやらせてもらっていて、実際に座長が立たれたときに自分との違いを感じるのが勉強になって毎日楽しかったです。

今年は探り探りというか、周りの人たちの芝居を見ていたらアイディアも湧いてくると思うんですが、それが出来ないのでやっぱり寂しいですね。
帰りも一人だし。

山城屋)そう!寂しいんですよね。
みんなが見ている緊張感はあるんですけど、それが無いから・・・。
それが一番変わったところかな。

先輩たちと絡まむシーンが無ければ、直前まで会わないですし、「久しぶり」って稽古期間に挨拶することも不思議に感じます。

でも、これだけ徹底した対策をして稽古していれば、無事に本番を迎えられるはずだって信じています。

劇場でも客席の雰囲気はこれまでとは違うことになると思いますが、心配事はありますか?

スタッフ)客席の席数は半分になります。1ステージ350人位です。
(サンシャイン劇場の定員は808席)

山城屋)ひぃ~

客席の雰囲気がどんな感じになるのか初めてのことなので、想像がつかないですね。
この夏に公演をやられた役者仲間に聞くと、お客さんは楽しんで頂けていると思うんですけど、反応が半分になるって。
特にコメディー作品だとお客さんのリアクションを受けて成立することがあるので「大丈夫か?」って迷いが生じたらしいです。

お客さんと一緒に作り上げていく作品はやりずらいと思っているようなので、SETもそこを大事にしているのでどうなんでしょう。

富山)客席がひとつずつ空いている方が緊張しませんか?

山城屋)するする!緊張する。

富山)想像してみたら、緊張しそうな気がしますね。
客席がギッシリしていたら特に思わないですけど、空いていると人対人って感じでかえって緊張しますね。

客席の間隔もそうですが、お客さんが全員マスクをしてるので、笑っているかも分かりずらいですよね

山城屋)そうなんです!
表情が見えないので、怖いです。
皆さん、マスクじゃなくてフェイスシールドにしてほしいですね。

富山)それか、お客さんひとりひとりを透明なボックスで囲ってほしいです(笑)

山城屋)笑って曇っちゃうかもしれない(笑)
あの人、曇ってるな~って(笑)

富山)あ、ウケてる!ウケてる!って。
バロメーターのように(笑)
静かなシーンに、キュキュっ音たてて拭いてたりして(笑)山城屋)劇場に足を運んでいただけるお客さんは気を付けて声を出さないようにとか、リアクションをしないようにとか、いつも以上に緊張されるのではないかと思うので、役者も緊張しちゃうと上手くいかないので、何とか普段通り楽しんでも大丈夫ですよって雰囲気を出せたらと思うんですけど、みんながみんな初めてのことなので、どうなるかな。
いつも通り、いつも以上に、お客さんを巻き込む気持ちでいきたいです。

ただ、客席のお客さんは逆に見易いみたいです。
隣も居ないし間隔が空いているので見易いらしくていいんですけど、役者としてはどうしてもリアクションを感じないと不安になっちゃうのでメンタルも強化して頑張らないと。

今回の公演では、劇団初のオンライン配信が行われますね。収録したものの放送とは異なり、オンタイムで全国のお客さんに観てもらえます。この点で、劇場とはまた違ったものになりそうでしょうか?

山城屋)これまでにもWOWOWさんで放送をしていただけていたので、収録してもらったことは何度もありました。
でも今回は生配信なので編集ができないとなると、緊張感はありますね。

WOWOWの収録は昼公演と夜公演を撮っていただいて、上手くいった方を使っていただいてるんです。
だから今回の生配信だと昼公演で間違えて夜公演で挽回しても、編集されないですしね。
怖いなぁ~。

去年の収録で昼公演が終わってから永田さん(永田耕一)に「セリフ間違ってたから夜はちゃんとやってくださいよ」って言いました(笑)

スタッフ)ひどーい!

山城屋)それなのに、夜公演もちょっと間違ってたんですよ(笑)
永田さんと二人で「どっちが使われるかな?」って(笑)

スタッフ)でも、永田さんがセリフを間違えるのは、きっとSETファンの方も待ち望んでますよ。

一同)爆笑

山城屋)配信で観て頂ける方の反応も欲しいので、リアクションボタンが欲しいですね(笑)

富山)笑い声が出るスイッチがあれば(笑)

山城屋)今回の配信でいいところは、一度劇場でご覧頂いた方にもすぐに配信で、「ここはこんな表情だったんだ」って確認してもらえるところですね。
そういう楽しみ方が出来るのはいいですね。

私たちもそうなんですよ。
公演中にアーカイブで見ることが出来るので、これまでにない体験です。
WOWOWさんの場合は、公演が終わってから放送されるので、公演中に自分たちも観られるのは嬉しいですね。

スタッフ)どうしましょうね?配信の次の日から芝居がガラっと変わってたら(笑)

山城屋)確かに!みんなチェックして、直してるかもしれない。

富山)変わるのが舞台ですから!(笑)