<イベントレポ>赤尾「一緒に寄り添う一緒に考えるスタッフを育てられる”真っ新な状態”の今が重要なんです」フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPANが障がい児ケアに向けたクラウドファンディングを実施中!同日キックオフイベント開催

イベントActAgainstAIDS/Anthing, レポート

イベント終了後に記念写真

1993年から1996年にかけて写真作品制作のためにカンボジアを度々訪問していた、写真家の井津建郎氏。

カンボジアへ何かの形でお返しをしたいという思いが膨らみ、シェムリアップに小児病院を建設することを決意。
1995年にフレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダー(FWAB)を設立。
翌1996年にフレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダー東京オフィス(のちのフレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPAN)を設立した。
1999年に最初のプロジェクトとしてカンボジアのシェムリアップに「アンコール小児病院」を設立し、2013年に現地化。2015年2月に新たなプロジェクトとして、ラオスのルアンパバーンに「ラオ・フレンズ小児病院」を設立、今年開院4周年目を迎えた。

フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーは、ラオスとカンボジアを中心に、アジアの子どもたちへの小児医療支援を行っている。

カンボジアからラオスに活動拠点を移しても「医療、教育、予防」をプロジェクトの柱とし、持続性のある小児医療のモデルケースを作り続けている。

2019年新規クラウドファンディングを立ち上げる

ラオスでの小児医療支援のため、これまでに3度のクラウドファンディングを行っており、いずれも成功を成し遂げてきた。

今年も「ラオスの障がい児ケアを一歩前へ!心に寄り添う人材を育てたい」というテーマで、新たなチャレンジを行う。

ラオ・フレンズ小児病院にて、障がい児と家族が笑顔を取り戻し、希望を持てることを目指すラオ・フレンズ小児病院の専門外来において、障がい児ケアの専門家育成のために必要となる費用の一部「250万円」の支援を呼びかけている。

クラウドファンディングページ:https://readyfor.jp/projects/LFHC2019(2019年7月4日スタート)

クラウドファンディング・キックオフイベント「寄り添う障がい児ケアの未来。私たちにできること。」

このクラウドファンディングをスタートさせるにあたり、キックオフイベント「寄り添う障がい児ケアの未来。私たちにできること。」が千代田区のNagatacho GRiD B1F Space0にて開催された。

ラオスから一時帰国した、代表の赤尾和美氏をはじめ、杏林大学医学部付属病院 患者支援センターから加藤雅江氏、そしてファシリテーターとして杏林大学医学部医学教育学教室講師の江頭説子氏が参加し、「寄り添う障がい児ケアの未来」について、クロストークを展開。

「話し始めると止まらないので、質問して割り込んでください」と言うほど、重めのテーマにも関わらず現地の様子やこれからについてを楽しげに話していることがとても印象的でした。

資料提供:フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPAN

登壇者

◎加藤雅江
<杏林大学医学部付属病院 患者支援センター 精神保健福祉士>
大学病院/救命救急センターにおいて自殺未遂者支援、暴力被害者支援(子ども虐待・DV・高齢者虐待の対応や予防)を行う。
日々の業務を行う中、病院での支援だけでは解決できない思いを感じ、2016年NPOを立ち上げ、子どもたちの居場所を作り、地域の中で子どもたちを、家族を支えていく仕組みを模索中。

2018年フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーのラオススタディツアーに参加。
赤尾さんの訪問看護に同行し、子どもたちにとって本当に必要なものとは何かを改めて考えるきっかけを得て、精進する毎日。

◎赤尾和美
日本の看護師免許取得後、臨床経験を経て渡米し、ハワイ州看護師免許取得。
1999年より2013年4月まで 、カンボジアのアンコール小児病院にてHIVと訪問看護の専門家として従事。
2013年よりラオスのラオ・フレンズ小児病院にてアウトリーチプログラム部長を務め、現在フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPANの代表を兼務する。

■ファシリテーター
◎江頭説子
<杏林大学医学部医学教育学教室 講師>
赤尾さんの講演を聴き、心が揺さぶられ、2018年8月に“フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダー ラオススタディツアー”に参加。
百聞は一見に如かず!ラオスの空気、風を肌で感じて以来、「今、ここで、私ができること」を模索中。

左から、赤尾さん、加藤さん、江頭さん

クロストークレポート

司会進行を務めたフレンズJAPANスタッフの永野さん
まずは主催した『フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPAN』の紹介を行い、次に共催で会場を提供した『株式会社 ガイアックス』の紹介を行う。

フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPANは現在、ラオスやカンボジアを中心にで小児医療を行っている。

医療を行っている団体なので医療従事者が立ち上げたと思われることが多いが、実際には写真家の井津建郎さんが1995年に立ちあげている。【Compassionate care~すべての患者さんを「我が子のように」大切に~】という事を根底にして活動しており、1999年にカンボジアのシェムリアップにアンコール小児病院を設立。開院以来フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーが運営してきたが、14年目の2013年1月に「カンボジア人によるカンボジア人のための病院」として現地化し、新たなスタートを切った。
その後、ラオスのルアンパバーンに活動拠点を移し、2015年2月に「ラオ・フレンズ小児病院(LFHC: Lao Friends Hospital for Children)」を設立し、現在に至っている。
なお、この病院も2025年に現地化が出来るように活動を継続中。一方、共催した株式会社ガイアックスは、「人と人をつなげ、社会課題の解決を目指すスタートアップスタジオ」としており、会場となったNagatacho GRiDは、このミッションを果たすべく、多くの人が集い、語り合い、ともに行動する拠点としてオープンさせた。

事前登録をしていれば、誰でも無料でGRiDの2FのGaiax Community Space(フリーコーヒー、Wi-Fi、電源)にて過ごす事が出来る。

イベント開催趣旨

グラフィックレコーディングを行う松本智子さん
このイベントを企画した意図は、この日から始まるクラウドファンディング「寄り添う障がい児ケアの未来。私たちにできること。」を参加者と一緒にリリースを行いたい、とのことだった。
そして、イベントが始まって20分後の19時20分にクラウドファンディングページ(https://readyfor.jp/projects/LFHC2019)が公開された。

登壇者の加藤さんと江頭さんは、フレンズJAPANが毎年行っている「ラオス・スタディツアー」に昨年参加、現地の様子などを視察しており、現地の状況を踏まえたクロストークを展開。

また、このクロストークの内容をビジュアルで書き起こすグラフィックレコーディングを行うため、福岡から松本智子さんが参加している。(わくわく記録帳:http://waku2kiroku.noor.jp/

ラオスの状況について

赤尾)カンボジアで培ったものを別の場所でも活用できないかと思い、ラオスのルアンパバーンに小児科病院を建てる事にしました。
県立病院の敷地をいただいて、2013年12月に建設を始め、初診療を行ったのは2015年2月になります。

初診療から4年が経過しましたが、患者さんの数は年々増えてきています。

2018年に参加した「ラオス・スタディツアー」

加藤)ラオス・スタディツアーでは、1週間ほど、ラオ・フレンズ小児病院を見せて頂いたり、赤尾さんの訪問看護に同行させて頂きました。

現地は乾季のはずなんですけど、道がぬかるんでいたりしていて、轍が酷くて中々前に進めないんですね。
こういう所をいつも赤尾さん達は行っているんだなという実感が沸きました。
逆に言うと、住人の方たちは車が無いと病院まで歩いてこなくてはいけなくて、大変な思いをしているんだなって思いました。
私たちのように「ちょっと熱が出たから病院に行ってくる」といった感覚ではないんだなって分かりました。加藤)あるご家庭で、知的にも発達的にも遅れている子供と出会いました。
病院環境さえ整っていたら、この子はもっと発達が出来るのに、環境が整っていないために失礼ながら不幸せだなって思いながら帰国してきました。

地域に出て場を作って子供たちと関わる事がしたいと思って、NPO法人「だんだん・ばぁ」を立ち上げて子供の居場所作りを始めました。
月に3回程度ですが、子供たちが70人ほど集まってくれて活動しています。加藤)ルアンパバーンで出会った子供のことが頭からずっと離れなくて、あの子たちは発達を促す場所があったら、違う結果になるんではないか思っていたんです。
あるお子さんは、お母さんから一緒に居られないと児童相談所に一時預けられました。
その経緯を聞いた時に、一番信頼している母親からそんなことを言われてしまった子供はどんな気持ちなんだろうって、環境が整っていれば子供は幸せだと思って帰国した私は、子供の幸せって一体何なのかな?って。

「だんだん・ばぁ」に来た子供と、ルアンパバーンで出会った子供、あまりに違うけれど、人を支援することとはどんなことなんだろうって実感させていただいたのが、この「ラオス・スタディツアー」だったかなって思っています。

特定非営利活動法人(NPO法人)居場所づくりプロジェクト「だんだん・ばぁ」
質問や困ったことがある時にはメールでも電話でも連絡くださいね。
メール:dandanbar.20160727@gmail.com
電話:080-3022-1154

5つの医療が"遠い"

赤尾)私は20年間東南アジアの小児医療に携わってきているんですけど、ラオスの状況を一言でまとめると「医療が遠い」ってことなんです。
遠いと言うのは、物理的に遠いって事だけでは無くて、色んな意味での「遠い」です。
5つにまとめたのがこちらになります。1.物理的距離、アクセスの悪さ
赤尾)まずは、物理的に遠いです。
とにかく、そこに行くまでが遠いんです。
時間が掛かる、歩き以外の移動手段が無い、お金が無い、行かれない。
がけ崩れなどがあったりすると道路をふさいで先に行かれない。
川が増水して橋を渡る事が出来なかったり、アクセスの悪さがひとつです。

2.行くか行かないかの選択
赤尾)訪問看護で村に行った時に出会った子なんですけど、何カ月も前に火傷をしてしまったらしんです。
先程の“病院に行かれないが”まずあって、治すために村にある薬草を使って治療をしたらしいです。
それで、傷自体は治ったんですけど、皮膚が固まってしまってました。

病院に行ったか尋ねたんですけど「行っていない」って言ったんですね。
それは何故かと言うと、ずっと痛かったり、出血していたら病院に行こうとなるんだけど、痛みはそこまで無いし、ご飯も食べるし、支障が無いので、お金をたくさん使って病院に行く意味があるのかと。
それで、お父さんとお母さんは、病院に行かないと決めたみたいです。

行かないと決めてしまうと、医療は遠いままなんです。
この子の場合は、くっ付いてしまっている箇所を少し切開すれば今後の生活で違ってくると説明をして、病院に連れていきました。

3.強い信心(文化的要素)
赤尾)民族によっては、悪い精神が体に入る事が悪い病気を起こさせると思っている方がたくさん居ます。
それを治すにはお祈りをしたり、カンボジアでは「コイニング」と言って、コインで体を擦るんです。絞りだすんです。
あとは「カッピング」と言って、カップを陰圧にして体に当てて吸いだすんです。
擦ったり吸ったりして皮膚が内出血でが赤くなると、悪いものが出てきたと思うんです。

私はそれでは治らないことは分かっているんですけど、病気の時の弱い気持ちをちょっと元気にさせてくれるように思えるんです。
体を擦ってもらいながら「どうしたの?」「いつから痛いの?」って言われるだけで、何となく半分くらい元気になった気になるんですね。

信じているものは、すぐには変わらないです。
これを最初から否定してしまうと、相手との関係性が構築されないので、すべてが遠いどころか、ゼロになってしまうんです。
ですので、出来るだけ尊重をしながらも、新しい情報を提供していって、信頼関係を構築していって、病院にも来てもらえるようにしていきました。

4.医療の質
赤尾)これら3つの“遠い”を克服して病院に行ったところで、医療の質がちゃんとしていなければ適切な医療を受けられないので、それも“遠い”のひとつだと思っています。

スライド右下の写真なんですけど、ここは分娩台です。
でも、不衛生なままなんです。そこで赤ちゃんを産もうなんて思わないですよね。

病院に行っても邪険に扱われたり、誤診・誤薬で治らなかったりもすることがあると「病院に行ったのに治らないから行くのを止めよう」ってなってしまうんです。

5.医療を受ける側の準備の問題
赤尾)最後は、医療を受ける側の準備の問題があります。
病院にたどり着いて、適切な医療があり、お薬が処方され、お母さんに「1日に2回12時間おきに薬を飲んでね」と伝えたとします。
でも時計を使わない生活をしていた場合、12時間おきの意味が分からないので、お薬を飲ませることができないんです。
では何からするかと言うと、時計の勉強とか数字の勉強から始めるんです。

日本で時計を使わない生活はほとんどないと思いますし、むしろ電車が1分遅れただけで「遅れて申し訳ございません」っていう車内アナウンスを聞いてとても違和感を感じてしまうのですが、ラオスやカンボジアではまだ時計を使わないで生活をしているところがあります。
時間に限らず、言語や知識も受ける側の準備に含まれます。

これらの5つが、私がいまのところ見えている“遠い"になります。

「他と違う」という差別

赤尾)今回のテーマでもある「障がい児」ですけど、障がいを持った子供が村の中では「何々が出来ない◯◯ちゃん」っていうような存在をしているんですね。
まわりは、何かが出来ないから私たちが手伝ってあげるってなるので、その子に対して特別感はないんです。

日本やアメリカではグローバリゼーションといって、壁を無くしましょうってやっているんですけど、壁を作ってから「無くしましょう」と言ったところで、中々無くならないんじゃないかなって思うんです。
壁を作る作らないメリットデメリットがあるんですけど、これからのラオスは、壁を作らないで良いところを残して進んでいくとよいなと思うんです。

今年開催のクラウドファンディングについて

赤尾)これまでに3回行ってきて、今年が4回目になります。
2016年実施:年間800人の命を救う、清潔で安全な手術室をラオスに作りたい
2017年実施:難病の血液疾患・サラセミアと闘うラオスの子どもたちを救いたい
2018年実施:ラオスの障がいがある子供たちをキラキラの笑顔にしたい!

去年、障がい児のためのクラウドファンディングを行ったのですが、これを始めた経緯は、それまでラオスの中で障がいというものが見逃されてきていたんですね。
普通に過ごしてきていたからという事もあるんですけど、医療従事者であっても障がいに対して考える必要があるという認識がなかったんです。
障がいもを持った子供が発熱して病院に来たとしても、発熱に対して対応するけど、それ以外は何もしないんですね。
それは何故かと言うと、緊急性が無いということと、知識が無いことと、そして前例もないためにまったく手付かずだった気がします。

日々、障がいがある子供をたくさん見てきて、聞いてみると、それまで誰からも障がいに関しては何も言われてこなかったという子がとても多くいました。
ですので、その子供たちのために何か出来ないかと思い、医師、看護師、ソーシャルワーカー、ホームケア、栄養士など、多業種のスタッフが関わる障がい児のためのクリニックをオープンすることになりました。
最初はどれくらいニーズがあるか分からなかったので、パイロットプロジェクトとして短期間で始めたんですけど、やり始めたらどんどん患者さんが増えていったので、引き続きのお金が必要になったため、前回のクラウドファンディングを行う事にしました。

継続するためのお金をいただいたお陰で、いままで見逃してしまっていた障がい児をスタッフが見つけ出せるようになってきました。
徐々にクリニックの評判がコミュニティへ広まってきて、うちの子も障がいがあるのではないかと受診する人が少しずつ増えてきていますし、彼らを受け入れるクリニックスタッフは、障がいの有無、種類を判断し、レベルを評価できる力がついてきました。
これまでにのべ800名ほどが受診しました。赤尾)前回のクラウドファンディングのおかげで、スタッフへ教育するためお時間をいただくことができたので、アセスメント、レベル、障がいの種類を判断出来るようになってきました。
次に何が問題かというと、個別に応じたケアや治療までは辿り着いていないんですね。
評価は出来たけど、じゃあどうするか?ということです。
同じ脳性麻痺でも個別性が必要になりますが、そこが難しい。

資料に書かれていることを伝えるだけで、自分で考えて、この子の家族構成だったらどんなことが出来るのか、この子の住環境だったらどんな可能性があるのか、リソースがどれだけあるのかなど、ベストな方法を選ぶところはまだ弱いです。
その為には専門家からの指導が無いと「障がいってなに?」から始まったスタッフがやっとアセスメントを出来るようになったので、さらにケアなんていうと私たちだけで考えるのは難しいんですね。江頭)リソースは日本の方が進んでいる部分はあるかと思うのですが、加藤さんはどう思われますか?

加藤)いま仰ったことって、日本で支援する人たちが考えながらやっているかって言うとね、私はやっていないんじゃないかって思うところがあるんです。
江頭さんが言われたように、リソースがあるが故にマニュアルに沿って、あるいはルールに沿って宛がっているんじゃないかなって思うんです。

赤尾さんが仰った、そっくりそのまま個別に住環境などから、何があればこの子にとって良い環境が作れるかなっていう事を、個別に考えていくだけのスキルや気持ちを持って患者さんに関わろうって思えているかなって。
マニュアルがある事が悪い事ではないんです。
私も病院にいるので、命に関わる所なのでどうしたって最低限の担保はしなければならないので、マニュアルやルールは必要です。
でもそうすると、気持ちが動かなくて、気持ちが置いてけぼりになっちゃうだろうなって。

赤尾さんの話を聞いていると、マニュアルがあるのは何の為かなっていうと、支援する側がある程度守られるためにあるのではないかなと。
それこそ、ラオスに戻って支援の仕方を考えても良いのかなって思います。赤尾)本当にそうですね。
マニュアルがあることに安心して、そこから先を追及しなくなることがあるのではないかと。
両極端ですよね。

ラオスではマニュアルの「マ」も無いですし、「マ」を作る元のものもない。
だからこそ、色んな可能性が考えられるのもあるんですけど、下手にマニュアルを作ってしまって、それに則っていくとコピペしか出来ない人材になってしまうので、このまっさらな人たちをどう教育しているのかということがすごく重要で、それは、教育する私たちにかかっているんです。

ケアをする人を育てる人材育成について

加藤)ラオスに行ってみて、自分が持っている価値観というものがガラガラと崩れた感じがしています。
自分の中では当たり前と思っていることが、当たり前じゃないんだって。

日本の現状では、呼吸器はかなり小さくなってきていて、気管切開をしなくても、マスク型のもので対応出来たりするんですね。
それぐらいの大きさで帰れてしまうので、選択肢として提示をしない訳にいかないんです。
それで提示した時に、それを受け入れないとなると、逆に説得にかかってしまったり、「なんで助かる事をしないんだろう」っていう感覚になってしまってます。

先程赤尾さんが仰っていた、患者さんと一緒に悩む時間を過ごすことが無くなっていて、一緒に悩める人材をどうやって作っていくかなって思います。

私はラオスに行って、日本の中で人を育てていく原点を見た気がしていて、人に寄り添うとか、人を支えることがいままで自分が考えていたことが若干違う、もうちょっと時間を掛けてもいいし、色んな選択肢がある中で選ぶことが支援をすることのゴールだと思いました。
選べないという選択肢もひとつあってもいいのかなって思いました。赤尾)日本は選択肢がたくさんある。
あることは良いことなのかもしれないですけど、あり過ぎてしまうこともネガティブなことになってしまう。
医療従事者としてこれもやってもらわないと命に関わるからっていう気持ちが働くのは当然なんですね。
なので、そういう風に無意識に仕向けてしまうのかもしれません。

ラオスの場合は選択肢が無いので「病院の中にこれ以上居ても治療法が無いんです」って言わないといけないことが多々あります。
その時に、家族に「どうしますか?」って伝えるんです。
中には「帰ります」って決断する家族も多いんですね。
帰るといった患者さんに対して、どういう気持ちで帰ると判断を下したのか、いまどういう気持ちになっているのか、考えられる人材を作っていかなければならないんです。
「帰るんですね、ハイハイ」って言うような機械的な対応ではなく、一緒に寄り添う、一緒に考えるスタッフを作る必要があるんです。
真っ新な状態の、今が重要なんです。
赤尾)目の前に居る人が何を欲しているのか見ようとする気持ちは、感覚を研ぎ澄まさないと出てこないと思うんです。
私の大事なことが目の前にいる人にとっても大事なはずと勝手に決めつけてしまうけど、価値観は全然違うし、大事に思っていることも違うかもしないと認識することが大事なんです。
それが、フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーのミッションでもある【Compassionate care】、心のこもったケアをしていこうってことなんです。
それは具体的にどういうことなのかと言うと、目の前にいる患者さんを、自分の家族、自分の子供としてケアする時にあなたならどうしますか?ってことなんですね。

自分の子供、自分の家族をケアしようと思った時に、感覚が鈍かったら出来ないですよね。
この部屋は暑いんじゃないかとか、この表情は何を訴えているのかとか、大人が子供の気持ちが分からないのと同じです。
医療従事者は医療を提供することなんだけども、情報を出してもらわなければ提供出来ないと思うんです。
そこを、私はラオスの人材育成の中で毎日言って、怒っているんです(笑)加藤)赤尾さんとお話をすると、私はソーシャルワーカーをしてますが、自分がやっていることは何なのか、もう一度意味を問い直したいなって思うんです。
諦めないことは大事なんですけど、それ以前に人と関わる覚悟やその人と向き合う覚悟をどれだけ自分は持てるか、それを持続していけるのか、そこが大事だなって感じる所なんです。
やはり、生半可な気持ちで出来る訳ないですし、この人と色んな問題を解決していきたいなって思えるかどうか、それが大事だなって改めて思いました。

赤尾)私も加藤さんとのお話や、楽しいお話をたくさんの方とシェア出来たことは、良かったなと思います。
また、新しく出会った皆さんもたくさんいらっしゃって、私が人生を今までやってこられたのは、いい人たちとの出会いとタイミングがあったからなんですね。
ですので、この出会いを大事にしたいなって思っています。

江頭)私もこのお二人が真摯に仕事に向き合って諦めずにしている姿を間近で見させていただけたので、今日は是非皆さんにお見せしたいなと思っていました。
お聞きいただきまして、ありがとうございました。

松本智子さんがクロストークを書き描いたグラフィックレコーディング

©松本智子
©松本智子
©松本智子

「ラオスで小児医療支援を行うNPO法人の活動を知る」ラオス スタディツアー参加者募集中

今年もフレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーが設立したラオ・フレンズ小児病院を見学する特別スタディツアーを企画している。
旅行実施日:2019年9月12日(木)~17日(火)4泊6日間

現地に駐在する代表の赤尾看護師が、通常は立ち入りを断っているラオ・フレンズ小児病院を案内する。
スタディーツアーならではの内容となっていますので、希望者はどうぞお早めにお申し込み下さい。
昨年は大好評につき、キャンセル待ちも!ただいま、参加者募集中です!

詳細は、受託販売を行っている株式会社 ピース・イン・ツアーの案内ページをご覧ください。