<初日レポ>長澤まさみ×秋山菜津子×阿部サダヲの三人による女の友情物語!?松尾スズキ作・演出の新作ミュージカル『フリムンシスターズ』12月まで絶賛上演中!

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松尾スズキの新作ミュージカルは『キレイ-神様と待ち合わせした女-』(2000年)以来、実に20年ぶり

2000年のミュージカル『キレイ−神様と待ち合わせした女-』でシアターコクーンに衝撃的な登場をして以来、シアターコクーンの空間を存分に遊び尽くしながら、人間の弱く繊細な部分を剥き出しに描く作品をコンスタントに発表してきた松尾スズキが、シアターコクーンでは4年半ぶり、シアターコクーン芸術監督に就任後初の書下ろしとなる“新作ミュージカル”、それが『フリムンシスターズ』。

主演は、今年女優生活20周年を迎える長澤まさみ。
映画『キングダム』『MOTHER マザー』『コンフィデンスマンJP プリンセス編』等、新たな境地に挑み続ける彼女が、満を持してシアターコクーンに初登場。
本作ではどんな顔を見せてくれるのか注目です。

そして松尾スズキが監督・脚本・主演を務めた映画『108~海馬五郎の復讐と冒険~』で主人公の友人役として存在感抜群の演技を見せつけた実力派女優秋山菜津子。
名高い演出家が信頼を置く秋山と長澤は2017年松尾が上演台本・演出を務めた『キャバレー』以来の共演で、女同士の友情物語を体現します。

また、大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』の主演をはじめドラマ『Living』『スイッチ』、映画『決算!忠臣蔵』『MOTHER マザー』など多くの話題作に出演し、巧みな演技で惹きつける大人計画の看板俳優阿部サダヲがこの物語に奥行きを与えます。

さらには、大河ドラマ『いだてん』や、『あなたの番です』など次々と話題作に出演する大人計画の怪優、皆川猿時。

近年『春のめざめ』『正しいロックバンドの作り方 夏』など舞台でも精力的に活躍する栗原類。

松尾作品に多く出演し、自身でも脚本・演出を務めるなど多彩な顔を持つオクイシュージ。

松尾作品の常連ともいえる豪華俳優陣に加え、村杉蝉之介、池津祥子、猫背椿、笠松はる、篠原悠伸、山口航太、羽田夜市、笹岡征矢、香月彩里、丹羽麻由美、河合優実、片岡正二郎、と総勢18名の個性豊かなキャストが集結し、笑いと混沌が入り混じる松尾スズキならではの世界観を彩っていく。

豪華な共演で上演前より注目を集めていたこの舞台が、10月24日(土)に初日を迎え、レポートが到着した。

公演レポート

この難しいご時世のもろもろを乗り越え、松尾スズキの書き下ろし新作ミュージカル『フリムンシスターズ』が待望の幕開けを果たした。
10月24日、その記念すべき初日の舞台はまず暗転と共に銅鑼の音が響くと妖しげな色の照明が光り、それに勝るほど派手に着飾ったドラァグクイーン姿の皆川猿時が登場。
そこは彼女が建てたテアトル・ド・モモという、新宿2丁目の上空に浮かぶ劇場なのだ。
「劇場が好きよ」。この一言が、多くの人が待ち構えていた初日独特の空気と相俟って、これはきっと客席だけでなく舞台裏も含め、心がひとつとなって物語世界へ一気に没入していく感覚があった。
その皆川演じる<信長>がストーリーテラー的な立場となり、物語はスタートする。舞台装置が動き、奥から出てくるのは一転して薄汚れた狭いアパートの一室。
そこは西新宿の小さなコンビニで働く<ちひろ>の部屋だ。
沖縄の方言丸出しで語るちひろは、無気力で猫背、住み込みでなぜか無給、そして時々店長と寝る毎日を過ごしている。
“西新宿のコンビニ幽霊”なんて呼ばれてもいる。
そして舞台上には巨大な白い円錐形状の身体を持つ<バスタオルおじさん>が立ち尽くし、ボートに乗った<黒人>が通り過ぎたりするが、これは彼女にしか見えない存在。
ちひろには沖縄のユタ、霊能力者の血が流れており、特殊能力を持っているのだ。
さらに西新宿の少し離れた別の場所にいたのは、10年のブランクを持つかつての大女優<みつ子>と、その“同志”として彼女をサポートする親友のオカマ<ヒデヨシ>。
自分の車で妹をはね、その後別れた夫に娘の親権を取られて心を病んでしまったみつ子がヒデヨシと共に偶然、ちひろが店番中のコンビニを訪れたことで3人は出会い、その運命を共にすることとなる。ちひろを演じる長澤まさみは前半の生きているのか死んでいるのかわからないくらいの無気力ぶりから、大ファンの女優みつ子に出会い生気を取り戻していくさまのギャップが激しく、その影と輝きのコントラストに魅了された。
みつ子役の秋山菜津子は大女優としての存在感は当然ながら、笑いを差し込んでいく間が絶妙で改めて松尾作品との相性の良さを確信。
また、ヒデヨシというキャラクターが持つチャーミングさはもちろんのこと、歌の表現力の豊かさからも客席の空気を力強く動かしていたのが阿部サダヲ。
さらに、ちひろをストーカーばりに見つめる奇妙な青年ジョージを演じた栗原類の不思議な存在感、語り部としてだけでなく別の役でも印象深い演技を見せつける皆川猿時、加えてバスタオルおじさんや英国人演出家役の村杉蝉之介、劇団員平目川や謎の韓国人ソヨン役の池津祥子、コンビニ店長の妻どてみ役の猫背椿といった大人計画劇団員たちもそれぞれ強烈に個性を光らせて物語を彩っていく。
キャスト陣は人数としてはここ近年の松尾作品と比べると少なめなのだが、とにかく各自が何役も見事に演じ分けていること、それぞれのポテンシャルがとんでもなくハイレベルなこともあって分厚さをも感じさせられた。
松尾曰く、このコロナ禍の影響で時間が生まれて歌詞を書くことが出来たからこそ、当初“音楽劇”の予定が“新作ミュージカル”となったという今作。
曲数は20曲以上と確かに多く、インパクトのある言葉もたくさん耳に残る。登場人物のバックボーンが歌詞で綴られるなど、物語の疾走感、スピード感にも繋がっていて展開は早く実にスムーズだ。
今回、音楽を担当したのは渡邊崇、振付を手がけたのは井手茂太で、二人ともが松尾演出の舞台作品に参加するのはこれが初めてだったこともあり、全体的にこれまでと色合いが変わった印象でとても新鮮に感じた。特に音楽は沖縄音階を取り入れていて、音の組み合わせ、重なり具合が非常に面白い。場面の飛び方や多面的な描き方も凝っているし、ギャグの多さとシリアスなモチーフの選び方がカオスのように入り組み、軽くて重くて浅くて深く、真面目なのに狂ってもいる。
この場には悲しみも切なさもやるせなさもある一方で、松尾の内面から滲み出てくる優しさ、キャストたちから溢れ出る朗らかさ、そして劇場全体に漂う喜びがある。特に二幕は予想が何度も何度もいい意味で裏切られることの連続で、そのワクワクはエンディングまでずっと転がり続ける。
この物語はファンタジーであり、マジックリアリズムであり、ハードボイルドにも思えて、でもやっぱり喜劇として着地する。
出演者全員が揃って歌う最後の曲『フリムンシスターズ』、このエンディングの幸福感は他に類のない味わい深いものだった。
ちひろの、ラスト直前のちょっとしたセリフに妙に納得させられたり、大勢で叫ぶスローガンに心を掴まれたり。
たとえ何も解決しなかったとしても、途中で選択を間違えたとしても、すべてをスッキリできずにモヤモヤを抱えたままでもいいのかもしれない、きっとそうやって人生はまだこれからも続いていくのだ。
そんな希望の光がふと胸に灯るような、多少の毒や刺激物を含むカンフル剤もしくは特効薬をキュッと心の奥に打ち込まれたような爽快さを味わいながら、劇場を後にすることができた。
この作品もまた、再演を続ける松尾の代表作『キレイー神様と待ち合わせした女ー』さながら、時代を越えて演じられる名作となるのだろう。
その第一歩となるこの“初演”の舞台は、Bunkamuraシアターコクーンでは11月23日(月・祝)まで、その後11月28(土)~12月6日(日)は大阪・オリックス劇場にて上演は続く。
作品が成長、変化していくさまも、ぜひ注目し続けたい。取材・文:田中里津子 / 撮影:細野晋司

あらすじ

都市開発から取り残された西新宿の一角に建つ小さなコンビニで、店舗の真上の薄汚れた部屋に住み、夕方から朝にかけて働くちひろ(長澤まさみ)は、廃棄弁当を食べ、コンビニの店長と寝て、暇さえあればYouTubeでお気に入りの昔のテレビドラマを繰り返し見る日々。
一方、ちひろが毎日見ているそのドラマの主演女優・みつ子(秋山菜津子)は、とある出来事をきっかけに10年間休業していたが大舞台へ復帰することに。
親友でゲイのヒデヨシ(阿部サダヲ)に付き添ってもらって久しぶりに稽古場へ向かうが、ヒデヨシのフォローもむなしく稽古初日から思うようにいかなかったため、不安定な精神状態になってしまう。
稽古終わりで飲んだ西新宿の帰り道、偶然立ち寄ったコンビニでちひろと出会うみつ子とヒデヨシ。

この出会いこそが“フリムンシスターズ”誕生のきっかけであり、彼らの戦いの始まりでもあった…。

SPWN(スポーン)とWOWOWメンバーズオンデマンドにてライブ配信が決定

11月12日(木)18:30の回にてSPWN(スポーン)とWOWOWメンバーズオンデマンドで一夜限りのライブ配信が行われることになった。
ライブ配信終了後もアーカイブ配信での視聴が可能になっている。

ライブ配信日時

2020年11月12日(木)17:45OPEN/18:30START ※途中休憩あり

配信メディア

SPWN(スポーン)

▼詳細URL
https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/20_furimun/topics/3852.html
※ご視聴にはSPWNへの会員登録が必要になります。(入会金、年会費は必要ありません。)

▼チケット料金
ライブ配信チケット:¥3,500
※チケットご購入時には別途¥220のサービス手数料が発生いたします。
※コンビニ、キャリア決済は¥220の決済手数料が発生いたします。クレジットカード決済を選択いただいた場合は、決済手数料は発生いたしません。

▼チケット販売期間
2020年9月19日(土)10:00~11月15日(日)18:00

▼アーカイブについて
・ライブ配信終了後、11月15日(日)23:59までアーカイブ配信をご覧いただけます。
・チケットをご購入いただいた方はライブ配信終了後、上記日程まで何度でもご視聴いただけます。
※チケット販売は11月15日(日)18:00までとなりますので、ご注意ください。

▼チケット販売に関して
・チケットは、お一人様1枚のみ購入が可能です。
・ライブ配信チケット1枚につき閲覧いただける端末は1台となります。第三者への譲渡・転売はできません。
 チケットのご購入は必ずご本人様が行ってください。

▼特別協力
東急(株)

WOWOWメンバーズオンデマンド

▼詳細URL
https://www.wowow.co.jp/stage/furimun
※ご視聴いただくにはWOWOWへのご加入が必要となります。

▼アーカイブについて
ライブ配信終了後のアーカイブ視聴可能。≪11月15日(日)23:59まで。≫

ご加入月は視聴料がかかりません。WOWOWに入りましょう。

ご注意

・各サービスの会員登録は、配信開始時刻より余裕を持って事前に登録をお済ませください。
・視聴環境や通信環境などについて、それぞれの配信サービスの HP に記載の注意事項を事前によくお読みの上、
 ご購入ください。 また、配信に関するお問い合わせは各サービスの問い合わせ窓口までお願いいたします。

COCOON PRODUCTION 2020『フリムンシスターズ』

作・演出

松尾スズキ

音楽

渡邊崇

出演

長澤まさみ 秋山菜津子 皆川猿時 栗原類 村杉蝉之介 池津祥子 猫背椿
笠松はる 篠原悠伸 山口航太 羽田夜市 笹岡征矢 香月彩里 丹羽麻由美 河合優実
片岡正二郎 オクイシュージ 阿部サダヲ
ミュージシャン/佐山こうた 佐藤芳明 城家菜々 田子剛 阿部光一郎 今井ブン

企画・製作

Bunkamura

東京公演

会場:Bunkamuraシアターコクーン
期間:2020年10月24日(土)~11月23日(月・祝)チケット発売日:2020年9月19日(土)
チケット料金(全席指定・税込):S¥12,000 A¥9,000 コクーンシート¥5,500
主催:Bunkamura

大阪公演

会場:オリックス劇場
期間:2020年11月28日(土)~12月6日(日)チケット発売日:2020年10月11日(日)
チケット料金(全席指定・税込):S¥12,800 A¥10,800 B¥7,800
主催:サンライズプロモーション大阪

公式HP

https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/20_furimun/