<演出家・金谷かほり&久下恵美インタビュー>女性だけの時代劇!5分間の立ち回りは圧巻!Super Eccentric Girls「華 -HANA-」12月18日より東京芸術劇場にて上演

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2018年に、劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)が初の試みとして”女性だけ”の「ミュージカル・アクション・コメディー」を上演したSuper Eccentric Girls「華~女達よ、散り際までも美しく~」。

あれから3年。
Super Eccentric Girls「華 -HANA-」へと大幅リニューアルして、12月18日(土)より東京芸術劇場 シアターウエストにて再演されることになった。

キャストには、パフォーマンス、ミュージカル等各界の女性猛者を集結し、クオリティの高いダンス、殺陣、歌を物語に融合させた“戦国ミュージカル・アクション・コメディー”を上演。

初演では描き切れなかった戦国末期の女性たちがそれぞれの立場で争い、決断する生き様を、エンターテイメント仕立てで上演する。

脚本家には時代物の脚本に定評のある鈴木哲也氏を初演に引き続き起用。
史実に基づきながらも、現代人に理解しやすいようにそれぞれの生きざまを現代の女性に共感してもらえるように、脚本も前回から改定しているという。

再演の企画段階から、大阪城公園での野外劇公演や海外公演を視野に入れた作品を創作しており、今回のインタビューでもその思いを語っている。

再演では、金谷かほりが演出を担う。
2001年よりUSJのショーの演出や、B’zや倉木麻衣といった有名アーティストのライブ演出を手掛け、2009年と2013年にはIAAPA(1918年に設立された世界最大のエンターテイメント・アミューズメント施設の団体で、世界90か国の4000を超える施設が加盟する)にて賞を受賞している。
世界的に活躍する演出家が女性だけの時代劇をどう彩るか楽しみである。

稽古が終盤に差し掛かる中、演出の金谷さんと、再演を企画し前回から引き続き出演している劇団SETの久下恵美さんにインタビューを行った。

インタビュー

今回再演になりますが、初演したSuper Eccentric Girls「華~女達よ、散り際までも美しく~」から久下さんが企画されていたのでしょうか?

久下)企画は、社長で私の同期の大関真が企画・プロデュースしました。
今回の再演は、私がもう一度やりたいと提案して実現しました。

前回の演出は大関さんでしたね。今回は金谷さんがご担当されます。演出が変わったのには何か理由があったのでしょうか?

久下)金谷さんに演出していただけることになったのは、偶然なんですけど。
去年8月に「情熱大陸」の放送の中で、私の高校の同級生で今回の舞台に出演している木村梨愛が映ると聞いて番組を見ていたんです。
その内容が金谷さんの密着だったんですけど、こんな素晴らしいエンターテイメントを作っていらっしゃる方と一緒にやってみたいと思い、オファーをさせていただきました。

2020年08月30日(日) 放送 「情熱大陸」Vol.1118
エンタメを諦めない!演出界の巨匠、再始動。「演出家・金谷かほり」
https://www.mbs.jp/jounetsu/2020/08_30.shtml

オファーされて、金谷さんのお気持ちはいかがでしたか?

金谷)ビックリしましたが、とても嬉しかったですよ!
昔からスーパー・エキセントリック・シアターの舞台はよく観てたので、嬉しいと思ってお引き受けしました。

いま久下さんの話を聞いて分かったんだけど、情熱大陸を見てオファーしたって言うけど、情熱大陸は良い場面しか放送してないから(笑)
それを見てオファーしてるから、今ガッカリしてるんじゃないかと思って、心配してますけど(笑)金谷)あの情熱大陸は、コロナで色んなイベントが中止になって仕事が無くなってしまっていて「仕事が無くなっちゃったから、何か仕事を作ろうよ」って、知り合いだった梨愛ちゃんと話して公演したんです。

情熱大陸で1年間、私に密着してくれてたんですけど、コロナの影響で一旦中止になっていたんですね。
なので私の情熱大陸は放送されずお蔵入りになるもんだと思っていたら、久しぶりにスタッフから電話が掛かってきて「何してますか?」って言うから「仕事がみんな無くなって錆びるといけないから自主公演ってやったことがなかったんだけど、小さなライブハウスで練習がてら初めてやってみる」って話をしたんです。
私はこれまで大きなエンターテイメントしかやってきてなかったので、それを取材してくれたんです。
放送のストーリーは、コロナ禍でも諦めない立派な人みたいな感じの描かれ方になってて(笑)

諦めないし一生懸命やってたけど、本当に何かやらなきゃって思ってたところを取材してもらって、それを久下さんが見てくれたんだよね。
だから人生は不思議なもんだって思った。

いまお稽古は佳境に入ってきてますけど、学ぶことばかりです。
久下さんと出会って、この仕事が好きになっちゃったから、これからまた何かがあるスタートなのかもしれないと思っている日々です。

このSuper Eccentric Girls「華 -HANA-」が演劇の演出をするのが初めてになるのですか?

金谷)私は演劇を勉強してきてはいないんですね。
ダンスから振り付けになって、演出になって、簡単な脚本は書く程度だったので、演劇が入る作品をやる時には演劇コーチとして、劇団四季出身の羽鳥三実広さんに来てもらってました。
羽鳥先生が教えているのを自分も一緒に体験したり、知り合った役者さんが文学座で芝居をやるので稽古を見たりお手伝いをしたりしてた程度だったんです。
演劇をDEEPにやってきた人間ではないから、初めてと言えば初めてかもしれないですね。

いま稽古は佳境かと思いますが、これまで演出をされてきていかがですか?

金谷)一番すごいなと思うのは、皆さんの熱心さ。
言い方が悪いですけど「演劇バカ」(笑)
舞台、ライブに対するパッション、激烈ですよ!

私は毎日座ってるだけなのに、家に帰るとグッタリしてるんです(笑)
私は全然動いてないので、皆さんのエネルギーに当たってるからだと思うんですけど。
だからとても良い経験をさせてもらってます。

女性しか出演者がいなくて、みんな忌憚なくお互い変な気遣いなく、いい気遣いしかなくやってこれているのは、これまで自分の中では無いです。
私は女子校出身なんですけど、ちょっとその時を思い出しました。

だけど今回は全員が大人の女性なんですよ。
それぞれ違うバックグラウンドで、それぞれが身に付いているものとか経験が違うじゃないですか。
だから究極の持ち寄りパーティーみたいなことになっていて、一人一人持ってくるものが凄いんですよ。
独特の味わい、オリジナルレシピ!

久下)そうですよね。
ミュージカル俳優がいれば、日本舞踊の方もいる、梨愛みたいにテーマパークに出たり、クルーズに乗って世界中でショーをする人とか。

金谷)持ち寄りパーティーに持ってきた料理がひとつも被ってないんですよ!
その味わいが良いものを私はひとつにまとめなきゃいけないから、私は塩にぎりでも出しておくかって(笑)

大人の女性が16人集まってやるのって、あまり無いんじゃないかな。
女性が男性の役をやるとかではなくて、女性が女性の役で演じて戦国時代を描くのは、すごいコンセプトだなって思いました。

大人で、バックグラウンドが違う女性ばかりが集まると、ぶつかることもあるのでは無いかと思うのですが。

久下)ぶつかるが無いですね。

金谷)バラバラなんだけど、性質が似てるんだと思います。
みんな素直な人間なんですよ。
全員が、自分が一番良いいとか、優劣をつけてないんです。
だから珍しい集団だと思います。
誰か一人でも居たら、そういう空気って出ちゃう訳。
でもそれが本当にない、これは清らか!

久下)本当ですよね。いらぬストレスが無い!(笑)

金谷)それに尽きる!
男の人が一人でも入ってたら、それは乱れるんですよ。

良いように見られようとしちゃう?

久下)そうそうそう!

金谷)出ちゃう!
私もラフな格好で来なくなると思う(笑)

久下)確かに!メイクもちゃんとしてる!

金谷)みんな、マスカラとか落ちてても泣きながら演技してる、泣きながら見てる、誰も化粧直しなんてしてないですから。
だから、それも良いなって思います。

今回の演出のテーマはございますか?

金谷)演出は、何を見せて何を見せないかって思っているんだけど、今回の舞台は見せなくていいものは何も無いと思ってるの。
全部見せたい!
全部見せて全部見た時に、お客様が感じるものは複数あると思うんですよ。
その中のひとつに「全員女性なのに、これをやったか」っていう圧巻を感じていただきたいし、きっとそう見えるだろうと思います。

あとは現代の女性たちが、過去の実在した人たちの生き様を見て何を感じていただけるか。
目には見えないけど、心のお土産として持って帰ってもらえたらって思います。

今とはだいぶ違って、めちゃくちゃ覚悟が必要な時代だから。
今もみんな覚悟をしてますけど、それはあるなと。

あとはコロナの影響があって、色々と自分で決めなきゃいけなくなってきたのを感じているだけに、この舞台を観たら何か感じるんじゃないかなって。
そういうことが、演出の中で見えたらなって思っています。

脚本も前回を大きく改定しているとのことですが、前回と大きく変わっているところは?

久下)全然別物じゃないですかね。
前回は前回の良さがあって、今回も良さがあるので、全然別物だと私は捉えています。
あと、エンターテイメントが増える分、見え方も違いますから、すごく楽しめる作品にパワーアップしていると思います。

SETの制作で劇団員以外の方が多く参加され、しかも女性だけの舞台というのは、どんな印象ですか?

久下)私は劇団SET以外にも、及川奈央との演劇ユニット「類類」とか、「類類」にお笑いコンビの「ニッチェ」に参加してもらった4人芝居をやっていて、この「華」だけではなくて、他で経験してるんです。

先程、金谷さんが仰っていましたが、女性だけだと楽なんですよね。
男性が入っている舞台も面白いんですけど、女性たちが何かを作り上げていくのが愛おしくてしょうがないんです。
女の人のカッコいい姿、キレイな姿、カワイイ姿、汚い姿を自分が見たくて、そう言う部分は女性だけの方が出せるかなって思ってます。
女性とばかりやってるからって、間違えないでくださいね!(笑)久下)男性と女性が演る芝居はうちの劇団もそうですけど、たくさんあるじゃないですか。
せっかくやるならそれでは面白く無いなと思って、女性同士の汚い部分とか醜い部分とか、男性が居ると出せない部分とか、それをありのままに見せられるようにするのが好きなんですよね。

前回の「華」の時に感じたのは、女性だけしか出てないのに孝蔵主がおね様を守って切られるところがあるんですけど、あの場面で男性が泣いてたんですよ。
主従関係とか忠誠心は男女変わらずあったので、男性もそういう目線で観てるんだなって感じて面白かったです。

今回の再演での見どころを教えてください。

金谷)それはもう立ち回りでしょ!
ものすごく手の速い立ち回りが約5分間行われます。
男性でも5分間の立ち回りはあまりないです。

大きい舞台だとキャストが出たり入ったりするんですけど、我々は16人でやっていてずっと出たまんま5分やります。
これは本当に凄いですよ!

久下)女性アクロバットダンス・カンパニー「G-Rockets」のメンバーもいらっしゃるので、立ち回り+アクロバットがあったり、元ジャパンアクションエンタープライズ(JAE)にいた佃井さんの立ち回りはキレイだし早いし。
元宝塚の音月さんも立ち回りの捌きが素晴らしいです。

金谷)観てる方も呼吸止まっちゃいますもん!
昨日照明スタッフが初めて通しを見たんですけど、切られたところを見て「キャッ」って言ってました(笑)
それだけ入り込んじゃってたんですよ。

こんなことは今までに経験が無いなと思って、これは海外の友達に見せたいです。
海外のエンターテイメントの仕事をしている人にこの作品を見てもらいたい。
このビジュアルだけでも良いなって言ってくれていて、海外の人に絶対に見てほしいです。

私のモットーは、成功するかしないかではなくて、成功するまでやり続ければ必ず成功するものになるって思ってるんです。
時間が掛かるか掛からないかだけで、短期間でやったら大成功って思うかもしれないけど、3年4年掛かっても出来てしまえば成功なので、出来るまでやればいい。
だから私は失敗しないってモットーなんです。

ですのでこの作品は来年海外の方が観るべきだと思うから、観てもらうまでは諦めない。
推して推して推しまくるのでございます!

久下)女性だけで、歌って踊ってコメディーもやって立ち回りもやって、すべてやってます。

金谷)この作品は戦国時代の女性の生き方を現代の女性が「こうやって生きてたんだ」ってお見せする。
それを演じる女性たちの心を世界の人に見てもらい、作品が素晴らしいだけではなくて、これを演じていること自体がすごいってことを見てもらいたいです。