劇団山本屋「午前5時47分の時計台」演出家:山本タク氏インタビュー

都内某所稽古場。
5月16日より始まる神戸公演を控え、劇団山本屋「午前5時47分の時計台」の演出家であられる山本タクさんにインタビューを行いました。

この作品を行う上での葛藤や、作品の内容と同じ経験をしたら山本さんはどのように行動するかなどお聞きしました。

阪神淡路大震災が起きた時、山本さんはどのように過ごされてましたか?

山口県の実家にいて、中学2年の1月でした。
僕がまだ子供だったので地震が来たとか分かってなくて、スヤスヤ寝てました。

テレビで神戸の街が映し出された時の印象は?

朝6時半頃に見た様子はまだ情報が入ってきていなくて、それからだんだん映し出されていったんですよね。
朝起きると父親から山口弁で「どえりゃーことになっちょるのー」って言ってたんですけど、その意味がやっとわかりました。

戦争が起きたのかってイメージと、舞台でもあるのですが、街が全部灰色に写っていたのを覚えています。

このようなニュースはいつも外国のことだったりするので、これが日本で起きてるんだって実感は無かったです。

とても恐ろしいことが起きてるってことはわかるんですけど、中2の頃の自分はまったく実感に取れなくて。
時間が経てば経つほど亡くなった方の数が増えていくことが、とても恐怖に感じたのを覚えています。

阪神淡路大震災を舞台で取り上げるきっかけは?

自分の舞台に出てくれている尾崎亜衣さんが「117KOBEぼうさい委員会」と関わりを持っていまして、委員会の方が舞台を観に来てくれた時がありました。
「117KOBEぼうさい委員会」で、阪神淡路大震災の事を演劇にしてみないかって話があったらしく、うちだったらそのお芝居を作ってくれるんじゃないかと思っていただたようで正式にオファーを受けました。

ただ私自身が神戸出身ではないので、オファーを頂く前からもこの題材を台本に書いては絶対にならないって思いがあったんです。
それでも、3.11の津波で宮城県石巻市雄勝町にある2階建て公民館の上に乗っかった観光バスを撤去するニュースを見てた時にすごく疑問に覚えました。

ニュースを見た時期に劇団「民芸」の舞台を観てたんですね。
民芸は昔あった出来事とか歴史などをとても深く掘り下げて作られているところで、自分も演出家・脚本家としていつかはそのような作品を作ることになるじゃないかなって感じていたこともあり、震災の現地に行きました。

タクシーでいろんな場所を案内してもらって、自分がこの仕事をしているって話をしたらドライバーさんが「みんな怖がって震災のことを伝えてくれない」って言ってたんです。
そして「みんなに伝えて欲しい」って言われました。

2016年の初演を行ってみていかがでしたか?

やっぱり神戸出身じゃない僕がやって良いのかってすごく怖かったんですけど、脚本を作るにあたり、神戸の街を歩いて、たくさんの方からお話を聞いてみたら「この作品をやって良い」って許してもらえたようか感じがしたんですよね。

稽古場で作っていく過程で「これ書き過ぎなんじゃない?」とか、「ここまでやっていいものか」等あったんですけど、演劇なので事実をなぞるように書いても面白くもなく、そもそもリアルに書いても伝わりにくいですから。

作品の中で事実の何を盛り込むかと言ったら「残った方々の思い」なのかなと。
ここに辿り着けたので、自分も許してもらえたかなって感じることができました。

再演に向けて、初演から変えたことはありましたか?

それはすごく悩んだんですけど、初めにこの企画をやる時に僕が死んでも続く作品にしたいなって思いがありました。
実際、100年経っても震災という事実は変わらないものなので。

なので、再演する過程で無理に何か変えるいくことはあまり意味が無いなって。
キャストが変わったり、見えやすいように立ち位置を変えたりはしていますが、話の内容やスジは変えていません。

ドイツのオペラの作品が400年変わらず続いているように、そこまで仰々しくは無いですけど、20年後に「その時代のその人が20年前に残してくれた」ってなってくれたら良いなって思ったので、根幹は変えず臨もうってチャレンジしています。

防災イベントの取材をした時に、あれだけの災害が発生していても、防災に対する意識が揃わないことが不思議だとおっしゃっていた方がいました。
その点は、どう思われますか?

すごく葛藤がありますね。
初演の時は、実際に被害に遭われた方たちのことを描くので、稽古場で段々ピリピリしてきてました。
ゲネプロをしてた時にも地震が発生したりして、緊張感はありました。

気負う部分もありますが、気負いすぎてもいかないですし。
僕は伝えることが仕事なので。

少しどこか割り切りながらも割り切れないまま、今日まで来てますね。
2回目なので以前よりは出来るようになってきましたが。
演出家としては客観しないといけないんですけど、まだまだ未熟ですからどうにか客観視していかなきゃって思ってます。

作品では過去に戻る話になっていますが、山本さんが過去に戻るとしたら何時に戻りますか?

えー?稽古初日かなw
それは置いておいて。

そうですね、親父と喧嘩した時とかですかね。
16歳とか17歳の時に反抗期だったので凄い酷い事を言ってしまい、今となっては何でそんな事を言ったんだろうなって。

あとは、劇団とかユニットとか大切だった仲間とかが離れてしまった時がありまして。
5〜6年前までは、なぜあの時にそうなってしまったのかって、その時の事を思い出すことがありましたね。

基本的にポジティブに前を向いていこうっては思っています。

作品の中にある「三つの決まり」はかなり酷なことですね

そうなんですよね。
役者が稽古中に自然に涙を流すことがあって「約束やぶっちゃった」って言ってることがあるんですけど。

僕がもし過去に戻って、失った大切な人と逢ったらしてしまうだろうなって事を全部禁止しました。
そうするとその先に物語があったり、乗り越えるものがあるんじゃないかなと思って作りました。
「泣く」ということが、生まれるとか、すべてを洗い流すとかになれば良いかなと。

「震災が来ることを人に言ってはいけない」「助けられる命は一つだけ」というのはとても苦しく、泣きたくて泣くのではなく、自然に涙が落ちることがあるのに、それさえも許されないのは辛いですね

このことはキャストにも「山本さん、酷い事を考えるね!」って言われましたw

この作品を観られる方にメッセージをお願いします。

数ある舞台を僕は観てきたり作ってきたりしてきたんですけど、原点回帰というか、一番大事にしないといけないものを全部詰め込んで書いてる作品です。

一人になりたいとか、一人だなって思う夜とかもあったりするんですけど、いつも振り返れば誰かいるし、大切な人がいるし。

自分主義で命は生まれているものではなくて、他人を悲しませないためにあるんじゃないかなと最近思うので、この作品を観終わったあとに、ふと思い浮かんだ人に連絡をしてみてくれたら嬉しいなと思います。

---お忙しい中、ありがとうございました。

阪神淡路大震災から22年経った今だからこそ

山本さんはこの題材を扱うことに葛藤があったと述べていた。
自分は経験者ではないからと。
分かっていない者が扱って、傷つけたらどうしようとの思いがあったのだろう。
ただ葛藤があったという事は、脚本家・山本タクとして扱わなければならないという気持ちがあったからこそ。

公民館の上に乗っかった観光バスを撤去するニュースを見た。
劇団「民芸」の舞台を観て、いつか自分も深く掘り下げて作る作品をやるだろうと思った。
石巻のタクシードライバーから「みんなに伝えて欲しい」と訴えられた。
そして、尾崎亜衣さんが「117KOBEぼうさい委員会」と関わり、この題材のオファーを受ける。

気持ちが蓄積し、背中を押され、この作品を演るべくしてやる事になったのではないか。
山本タクだから出来たこの作品。
題材が故に堅苦しい内容になりがちだが、そこは演出家・山本タクとして力を発揮する。

5月16日から始まる、劇団山本屋「午前5時47分の時計台」。
22年前の出来事を知っている人も知らない人も、あの時神戸で何があったのか、どんな気持ちで過ごされていたのか、熱を持って伝えらえるので受け取ってほしいと思います。

~神戸開港150年記念公演~
117KOBEぼうさい委員会×演劇企画ユニット 劇団山本屋
『午前5時47分の時計台』

作・演出

山本タク

主催

神戸新聞社
神広企画株式会社
演劇企画ユニット 劇団山本屋

出演

いしだ壱成
廣川三憲 / 板垣桃子 / 尾崎亜衣 / 尾崎由衣
斉藤とも子 / 宮地真緒 / 北原雅樹
小坂涼太郎 / 真嶋真紀人 / 水野伽奈子
南出めぐみ / 阿部大輝 / 澤井裕一

村上健人 / 上山蓮太郎 / 林田雄貴

長江健次

花*花(全公演、終演後にミニライブ出演)

神戸CAST:川崎美千江 / 七井貴行 / 髙木聡一朗 他
東京CAST:田浦傑 / 花奈澪 他

ゲスト出演

5月16日(火)19:00 大林素子 関本賢太郎(元阪神タイガース)
5月19日(金)18:30 山口良一 西山浩司
5月20日(土)18:30 石田純一
5月21日(日)11:00/16:00 桧山進次郎 関本賢太郎(元阪神タイガース)
※その他公演のゲストは調整中の為、決定次第発表致します。

オリジナルメインテーマソング

「まだ愛してる」 花*花

公演日程

※受付開始・開場は開演の1時間前

神戸公演

■神戸ポートピアホテル ポートピアホール
5月16日(火)19:00
※17日の公演は全日本広告連盟神戸大会の催しとして開催。

■神戸新聞 松方ホール
5月19日(金)18:30
5月20日(土)13:00 / 18:00
5月21日(日)11:00 / 16:00

東京公演

■光が丘IMAホール
6月2日(金)18:00
6月3日(土)13:00 / 18:00
6月4日(日)11:00 / 16:00

<チケット>
◎カルテットオンライン https://www.quartet-online.net/ticket/tokeidai2017

S席:4500円 / A席:4000円
※当日券は各席プラス500円増しとなります。
※未就学児童の入場は出来ません。

LINKS

劇団山本屋ホームページ

http://yamamotoya.tokyo/

神戸新聞社ホームページ

http://club.kobe-np.co.jp/corporate/

117KOBEぼうさい委員会

http://www.kobe-np.co.jp/info/bousai/

いしだ壱成、尾崎亜衣、斉藤とも子3人インタビュー。舞台「午前5時47分の時計台」

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~阪神・淡路大震災から22年後の日本で~劇団山本屋「午前5時47分の時計台」公演決定

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